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2021/02/18

慶應義塾大学病院ブレストセンター長の林田 哲 医師と砂村CEOが対談しました

 

 当社の砂村CEOが、日本の乳がん治療の第一線を走るスペシャリストである慶應義塾大学病院ブレストセンター長の林田 哲 医師とともに、日本の乳がん検診の課題や将来展望について、熱い議論を交わしました。

女性がかかるがんの第1位「乳がん」

林田:
 日本人女性は他のがんと比べて、乳がんになる人の割合が最も高く、11人に1人が乳がんになっています。例えば、1クラス30人の女子高があったとしたら、同級生のなかで3人は乳がんになるという確率です。極めて高い罹患率(りかんりつ)ですね。

 一方で、死亡率はというと、さまざまながんのうち、乳がんは第5位というデータがあります。つまり乳がんは、早く見つけることができれば、治る可能性が高い病気ということです。

 また、40~50代の女性がかかりやすいことも乳がんの特徴です。40代からぐんと上がり、60代くらいからゆるゆると下がっていくような年齢分布になっています(図1)。日本では、比較的若くて働き盛りの女性がかかりやすい病気といえるでしょう。

 図1 日本における乳がん罹患率(人口10万対)

  出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(全国がん登録)
  全国がん罹患データ(2017年)

検診受診率の地域差には医療制度が影響?

砂村:
 乳がんは早く治療すれば治るということは、検診などで早期にがんを発見すれば死亡率が下がる可能性があります。しかし日本の場合、乳がん検診の受診率は諸外国に比べて低い。このあたりが今後の日本の課題といえるでしょうか?

林田:
 がん検診の受診に関しては、欧米諸国では1990年代初頭から国が旗を振ってマンモグラフィ検診を広めていった歴史があり、アメリカの受診率は2015年時点で79.5%です(図2)。一方で、日本の受診率は、42.3%(2016年時点)と、非常に低い。

 このような背景から、乳がんによる死亡率は、欧米では年々下がってきているのに対し、日本では上がってきています。私は、現在日本で使える薬や手術の技術などについて欧米との差はないと考えていますので、検診などにより早い段階で乳がんを発見できるかどうかということが、死亡率に関わっているのではないかとみています。

 図2 各国の乳がん検診受診率データ

  出典:OECD Health Statistics 2019

 がん検診の受診率に影響する要因としては、「一般診療」の受けやすさが考えられます。いまの日本の医療制度では、乳がんの可能性が無い人でも、少し胸が痛い、かゆいといった症状を感じたら、すぐに大学病院の専門医を受診できます。つまり、何かあったら病院に行けば「一般診療」を受けられるから、自ら率先して「定期検診」を受けようという人が、なかなか増えにくいのかもしれません。

 しかし欧米では、「一般診療」を受けられるまでに何日も順番待ちが必要なことも少なくありません。そのため、公的支援による「定期検診」の機会を活用する人が多いのではないでしょうか。

忙しい世代に勧めたい「自宅でできるだ液検査」

砂村:
 乳がんになりやすい40~50代の女性は、仕事、子育てや介護などで忙しく、検診を受けるために病院へ行く時間がとれない、という社会的課題があります(図3)。

 当社では、このような課題を解決するためのツールとして、だ液がん検査をご活用いただきたいと考えています。がんで異常値を示すだ液中物質の濃度をAI等で解析し、一度の検査で乳がん、肺がん、大腸がん、膵臓がん、口腔がんの5種類(対談当時は5種、2022年12月現在は胃がんを含めた6種)のリスクをがん種ごとに評価することができます。

 自宅などでごく少量のだ液を採取し、当社へ配送するだけなので、手軽にでき、血液検査よりもからだに負担をかけずにできるのがメリットです。

 この検査は、全国の医療機関(約1,200箇所)のほか、SOMPOホールディングス株式会社をはじめとする当社の協業先を通じ、各種団体(健康保険組合や企業等)向けにも提供されています。健康保険組合では、女性の検診受診率が低く、特に家庭の主婦たちが検診に行かないことが問題視されていました。しかし、本検査を受けたことがきっかけで、「検診も受けてみよう」と、主婦たちの意識に変化が見られたそうです。

 図3 日本人女性が乳がん検診を受けない理由(女性、n=405)

  出典:平成28年度 がん対策に関する世論調査

AI×超音波検査で「がん」と「良性疾患」を判別

林田 哲 医師

林田:
 近年、AI技術を駆使して既存の医療の限界に挑むような取り組みが、盛んに行われていますね。乳がん検診についても、大学と企業により「人工知能を用いた超音波検査」の共同開発が進められています。

 大学側では、慶應大学を含む8施設で1万名分の乳房組織の画像を集め、人工知能で乳がんかどうかを評価しています。この人工知能は、人間の眼ではがんと区別がつきにくい良性腫瘍や乳腺症を正確に判断してくれるため、より精度の高い超音波検査が可能になることが期待されます。

 企業側では特許申請や、ユーザーインターフェイスの開発、PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)への医療機器 製造販売承認申請に向けた準備を同時並行で進めています。

セルフケア、かかりつけ医、専門医の連携で「意図した早期発見」を!

砂村:
 自宅でだ液検査をしてがんのリスクを測定し、かかりつけ医がAIによる超音波検査でがんの有無を確認してから専門医を受診するという新たな検診の流れができると良いですね。そうすれば、より早期に乳がんを発見でき、すぐに治療を開始できます。早期発見、早期治療で死亡率を下げることができるはずです。

 いまは、自分の体は自分で守る、セルフヘルスケアの時代。がんは早期のうちは無症候で進行するため、違和感が無いうちから自ら検査を受け、「意図的に早期発見」することこそが「真の早期発見」ではないでしょうか。一人でも多くの方が、「たまたまがんが見つかった」ではなく、「意図した早期発見」を目指せるようになるといいですね。

砂村CEO

砂村 眞琴
大泉中央クリニック院長
株式会社サリバテック代表取締役CEO
東京医科大学八王子医療センター兼任教授
慶應義塾大学医学部非常勤講師
東北大学医学部非常勤講師



林田 哲
医学博士
慶應義塾大学医学部 外科学 専任講師
日本外科学会 専門医・指導医
日本乳癌学会 専門医・評議員
がん治療認定医機構 がん治療認定医
検診マンモグラフィ 読影認定医
厚生労働省健康局長 医師緩和ケア研修会修了
米国臨床腫瘍学会(ASCO) active member

※記事の内容や経歴は、2020年10月対談当時のものです。