2022年における日本人の死因第一位は、がんです。がんによる死亡者は全体の24.6%を占め、現在日本人の2人に1人は一生のうちにがんと診断されるといわれています。近しい人ががんになったり亡くなったりして、自分もがんになっているのではないか、早く見つける方法はないかと不安に思っているのではないでしょうか。
がんを見つけるには、「がん検査」が有効です。がん検査は安価に受けられるものもあり、検査によって早くがんを見つけられれば治る確率を高められます。
当記事では、がん検査の必要性や費用の目安などを解説します。健康診断とがん検査の違いについても説明するので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
なぜがん検査が必要なのか?
がん検査が必要な理由は、以下の2つです。
- 早期発見・早期治療につながる
- がんによる死亡率を低下できる
がんは加齢やたばこ、お酒、特定の感染症などによってリスクが上がるとされています。そのため、がんのリスクが高い人は、検査を受けて早期に発見することが大切です。ここからの内容をもとに、がん検査の重要性を理解しておきましょう。
早期発見・早期治療につながる
実は、多くのがんは、早く見つけて治療を開始すれば高い治癒率を期待できます。
例えば、がんの中で患者数・死亡数ともに第3位の「胃がん」は、早期に見つけて治療すれば、ほぼ100%完治する病気です。しかし、進行してから見つかった場合、半数以上の方は助かりません。胃がん以外のがんも、早期に見つかれば9割ほどは完治が期待できます。
早期のがんは自覚症状がほとんどないため、症状が出てから受診して発見された場合は、がんがだいぶ進行しているケースがよく見られます。そのため、治癒率の高い初期にがんを見つけるには、定期的ながん検査が重要です。
がんによる死亡率を低下できる
がん検査によってがんを早期発見・治療できれば、死亡率も低下します。たとえば、多くの職場や地域が実施している「大腸がん検診」は、受診していない人に比べて受診した人は大腸癌の死亡率が約70%低下したというデータがあります。
がんの検査が死亡率を下げるメカニズムは、「がんの早期発見・早期治療」です。がん検査によって症状が出る前のがんを見つけて治すことで、死亡率を低下できるのです。
【種類別】がん検査の費用相場
がんの早期発見に有用な検査は、おもに以下の3つが挙げられます。
- がん検診
- PET検査
- がん検査キット
それぞれの検査について、発見に向いているがんの種類や向いている人、費用の相場などを説明します。
がん検診
がん検診とは、「がんが体の中にできていないか」を調べるために、とくに自覚症状のない人に対して行う検査です。がん検診でがんがある人やありそうなひとを発見して精密検査につなげ、早期治療を行うのが目的です。
がん検診は厚生労働省が定めた「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」に基づき、おもに以下5種類のがんに対して行われています。
- 胃がん
- 子宮頸がん
- 肺がん
- 乳がん
- 大腸がん
がん検診に向いている人は、「対象年齢に当てはまる全ての人」です。対象者には、市町村や職場、健康保険組合などから通知が来るため、自分が当てはまる場合は受診しましょう。
がん検診のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | 自覚症状がない早期にがんを発見できる自治体や企業、健康保険組合などの補助があるがんの死亡率を下げられる |
デメリット | 定期的な受診が必要になる「偽陽性」による不要な精密検査や過剰診断の可能性がある性別や年齢、家族歴などで受ける検診が決まっている |
がん検診は、自覚症状が出る前の早期にがんを見つけて死亡率を下げられるのが一番のメリットです。また、自治体や企業、健康保険組合などの補助により費用負担が少なくて済むのも大きな特徴といえます。
しかし、定期的な検査が必要になることや、「偽陽性」という、実はがんではないのにがんの可能性があると判断されて不要な精密検査を行う可能性があることはデメリットです。
必要な費用は、自治体や健康保険組合の補助を受けられる場合は無料~4,000円ほどと考えておきましょう。また、健康保険は、「病気やケガとすでに診断された人」を対象とするため、予防や発見のために行うがん検診は対象になりません。
なお、検診の費用は時間や場所を自治体や企業が指定する「集団検診」と、自分で医療機関を予約して受診する場合で異なる事例もあります。詳しくはお住まいの自治体や勤め先に確認してみてください。
PET検査
PET(Positron Emission Tomography、陽電子放出断層撮影)検査とは、がんの診断や治療効果の評価などに使われる、非常に精密な画像診断法です。
具体的には、FDGという、放射性フッソを添加したブドウ糖を注射し、どの細胞に多く取り込まれるかを調べます。がん細胞は通常の細胞よりも多くの栄養を求めるため、ブドウ糖が多く集まる場所はがんができている可能性が高いのです。
PET検査はさまざまな部位のがんで行われますが、特に以下のがんの検査に有用とされています。
- 頭頚部がん
- 悪性リンパ腫
- 悪性黒色腫
- 肺がん
- 乳がん
- 大腸がん
- 膵臓がん
また、PET検査は、以下に当てはまる人によく用いられます。
- 治療前にがんの有無や広がり、転移状況を確認する必要がある人
- 治療の効果を判定したい人
- 治療後の再発がないかを確認したい人
PET検診は精密さを生かし、「リスクの高い人に対し、より精密な検査を行う」ものです。そのため、がんの初期発見のためとして自治体によるがん検診では行われていません。希望する場合は、任意で行う人間ドッグや詳細な健康診断などを利用しましょう。
PET検査のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | 一度にほぼ全身の撮影ができる他の臓器への転移を早期に発見できるがん細胞が活発に活動しているかを確認できる |
デメリット | 費用が高額になる放射線被ばくのリスクがある臓器によっては判断が難しい |
部位ごとに行う必要があるがん検診と異なり、全身の精密な検査を一度で行えるのがPET検査のメリットです。しかし、ブドウ糖がもともと集まりやすい脳や心臓、消化管などは診断が難しいことや、放射性フッ素を使用するため放射線被ばくのリスクがあるのはデメリットです。被ばくを過剰に恐れる必要はありませんが、必要性を考えた上で検査を受けるかを決めると良いでしょう。
PET費用の相場は、受ける人間ドッグの内容によって大きく異なり、基本的には10万円以上と高額です。初期発見のために受ける場合は保険適用外となり自費、他の検査による転移・再発の診断が確定できないために受ける場合は、健康保険が適用されます。
がん検査キット
がん検査キットとは、自宅で簡単にがんの検査ができるキットのことです。血液や唾液、尿などを自分で採取して検査機関に送り、特定のがんのリスクを調べられます。なお、検査によって「現在がんにかかっているリスク」と「将来がんになるリスク」のどちらを調べるかは異なります。
がん検査キットは、自宅で簡単に受けられるため「痛い検査は苦手」「検査に出かけるのが負担」などと思う人におすすめです。
がん検査キットのメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | 自宅で手軽にできる好きなタイミングで受けられる検査のプライバシーが守られる |
デメリット | 自費となり、自治体による補助もないリスクを調べられるがんの種類が決まっている |
がん検査キットの費用は使用するキットによって幅があり、3-4種類のがんのリスクを調べるだけのものなら15,000円ほどです。手軽に検査できるがん検査キットは、検診へ足を運ぶのに抵抗がある人を中心に、近年人気を集めています。
年齢でも異なるがん検診の費用
がん検診にかかる費用は、年齢によって異なります。ここからは、以下の年齢について、受けておきたいがん検診の種類や方法、費用について説明します。
- 20代
- 30代
- 40代
- 50代
- 60代
自分の年齢に必要な検診を理解し、がんの早期発見・治療に役立ててください。なお、検診にかかる費用は補助の有無や実施期間によって大きな幅があるため、一つの目安としてご覧ください。
20代
国が推奨する20代が受けたいがん検診は、以下のとおりです。
がんの種類 | 検診の方法 | 受診間隔 | 費用の目安 |
子宮頸がん | 問診視診子宮頸部の細胞診内診 | 2年に1回 | クーポン配布者は無料自治体の補助を利用する場合は400円~1,500円ほど自費の場合は5,000円ほど |
20代で受けるべき主ながん検診は、女性の「子宮頸がん検診」です。厚生労働省の指針では、20代以上の女性に対して2年に1度の受診が推奨されています。費用は比較的安価で、自治体から無料クーポンが配布されれば無料、負担がある場合も自治体からの補助があるため、1,500円ほどです。自費で受ける場合は5,000円ほどと考えると良いでしょう。
また、子宮頸がん以外のがん検診は、自費による検診が基本です。費用は利用する医療機関によって幅があるため、どの検診を受けるかはがんのリスクがどの程度あるかを含めて医師へご相談ください。
30代
国が推奨する30代で受けておきたい主ながん検診は、以下のとおりです。
がんの種類 | 検診の方法 | 受診間隔 | 費用の目安 |
子宮頸がん | 問診視診子宮頸部の細胞診内診HPV検査単独法(体制が整っている自治体のみ) | 2年に1回HPV検査単独法については5年に1回・ | クーポン配布者は無料自治体の補助を利用する場合は400円~1,500円ほど自費の場合は5,000円ほど |
厚生労働省の指針に定められている30代のがん検診は、20代と同じ子宮頸がん検診のみです。30代になると、実施体制が整った自治体では「HPV検査単独法」という検査も受けられるようになります。
また、30代になるとがんのリスクが上がり始めるため、補助で受けられるがん検診の種類が増える自治体や健康保険組合は珍しくありません。たとえば東京都荒川区では35歳から胃がんのためのバリウム検査が無料で、千葉県松戸市では30歳からの偶数年齢の女性は、乳がんのエコー検査が400~900円で受けられます。
がんのリスクや補助で受けられる検査などを総合的に考えて、受ける検診を決めるとよいでしょう。
40代
国が推奨する40代で受けておきたい主ながん検診は、以下のとおりです。
がんの種類 | 検診の方法 | 受診間隔 | 費用の目安 |
子宮頸がん | 問診視診子宮頸部の細胞診内診HPV検査単独法(体制が整っている自治体のみ) | 2年に1回HPV検査単独法については5年に1回・ | クーポン配布者は無料自治体の補助を利用する場合は400円~1,500円ほど自費の場合は5,000円ほど |
乳がん | エコー検査マンモグラフィ検査 | 2年に1回 | クーポン配布者は無料補助の利用者は400円~1,500円ほど自費の場合は5,000円ほど |
大腸がん | 問診便潜血検査 | 1年に1回 | 補助の利用者は無料~600円ほど自費の場合は500円~2,000円ほど |
肺がん | 問診胸部X線検査喀痰細胞診 | 1年に1回 | 補助の利用者は無料~700円ほど自費の場合は2,000円~4,500円ほど |
胃がん | 胃部X線検査 | 1年に1回 | 補助の利用者は無料~3,000円ほど自費の場合は15,000円~20,000円ほど |
40代になるとがんのリスクが高まり、胃がん(X線検査)、大腸がん、肺がんなどの検診が追加されます。必要な費用や行う検査の詳細は自治体や健康保険組合によって異なるため、確認してみてください。
50代
国が推奨する50代で受けておきたい主ながん検診は、以下のとおりです。
がんの種類 | 検診の方法 | 受診間隔 | 費用の目安 |
子宮頸がん | 問診視診子宮頸部の細胞診内診HPV検査単独法(体制が整っている自治体のみ) | 2年に1回HPV検査単独法については5年に1回・ | クーポン配布者は無料自治体の補助を利用する場合は400円~1,500円ほど自費の場合は5,000円ほど |
乳がん | エコー検査マンモグラフィ検査 | 2年に1回 | クーポン配布者は無料補助の利用者は400円~1,500円ほど自費の場合は5,000円ほど |
大腸がん | 問診便潜血検査 | 1年に1回 | 補助の利用者は無料~600円ほど自費の場合は500円~2,000円ほど |
肺がん | 問診胸部X線検査喀痰細胞診 | 1年に1回 | 補助の利用者は無料~700円ほど自費の場合は2,000円~4,500円ほど |
胃がん | 胃部X線検査胃部内視鏡検査 | 1年に1回2年に1回 | 補助の利用者は無料~3,000円ほど自費の場合は15,000円~20,000円ほど |
50代になると、胃がん検診に胃部内視鏡検査が追加されます。X線検査は1年に1回ですが、内視鏡は2年に1回です。また、自治体によっては前立腺がんの検診を補助で受けられる場所もあります。
前立腺がん検診は血液検査です。受診間隔は3~5年に1回で、補助の利用者は1,000円ほど、自費の場合は6,000円ほどが目安です。
60代
60代で受けておきたい主ながん検診は、以下のとおりです。
がんの種類 | 検診の方法 | 受診間隔 | 費用の目安 |
子宮頸がん | 問診視診子宮頸部の細胞診内診HPV検査単独法(体制が整っている自治体のみ) | 2年に1回HPV検査単独法については5年に1回・ | クーポン配布者は無料自治体の補助を利用する場合は400円~1,500円ほど自費の場合は5,000円ほど |
乳がん | エコー検査マンモグラフィ検査 | 2年に1回 | クーポン配布者は無料補助の利用者は400円~1,500円ほど自費の場合は5,000円ほど |
大腸がん | 問診便潜血検査 | 1年に1回 | 補助の利用者は無料~600円ほど自費の場合は500円~2,000円ほど |
肺がん | 問診胸部X線検査喀痰細胞診 | 1年に1回 | 補助の利用者は無料~700円ほど自費の場合は2,000円~4,500円ほど |
胃がん | 胃部X線検査胃部内視鏡検査 | 1年に1回2年に1回 | 補助の利用者は無料~3,000円ほど自費の場合は15,000円~20,000円ほど |
自治体によって差があるものの、60代と50代ですすめられるがん検診の種類は基本的に変わりません。しかし、年齢とともにがんのリスクは上昇するため、60代になったら受けられるがん検診は可能な限り受けておくとよいでしょう。
健康診断の血液検査でわかること
「わざわざがん検査を受けなくても、健康診断を受けていればよいのでは?」と思う人がいるかもしれません。
しかし、健康診断は生活習慣病のリスクを中心に調べるものです。そのため、がん検査はメインの目的ではなく、別途がん検査を受ける必要があるのです。
健康診断の血液検査で分かる内容を、以下に紹介します。
- 貧血の有無や程度
- 肝臓の異常
- 腎臓の異常
- 高コレステロール血症
- 糖尿病
- 感染症や炎症の状態
健康診断で発見されるほど進んだがんは、初期状態とはいえず、かなり進行した状態です。
がんは「早期発見・早期治療」が大切なため、健康診断の血液検査のみで初期のがんを見つけるのは非常に困難といえるでしょう。
また、がんの診断に役立つ「腫瘍マーカー」と呼ばれる血液検査の項目もありますが、確実性は低く、あくまでも「がんの診断補助」に用途は留まります。
がんを早期発見・治療して死亡率を減らすには、年齢やリスクに応じたがん検査を受けるようにしましょう。
がんの早期発見には複数の検査を組み合わせるのがおすすめ
がん検査は1種類に依存せず、複数の検査を組み合わせるのがおすすめです。なぜなら、がん検査は種類によって金額や特徴が異なるからです。
そもそも、がん検査とは「その時にがんにかかっている可能性がどの程度あるか」を調べるものです。そのため、定期的、継続的に受ける必要があり、費用や時間が負担になるケースは珍しくありません。
費用負担が気になる場合は自治体や健康保険組合の補助を利用しましょう。検診を受ける時間がない場合は、手軽ながん検査キットでリスク管理を始めるのもひとつの手段です。
まとめ
がん検査の費用は、自治体や健康保険組合などの補助の有無によって大きな差があります。検査費用は補助を受けられる場合は無料~数千円程度で済みますが、自費の場合は数万円に及ぶケースもあります。
健康診断で代用できると考えがちですが、がんの早期発見に健康診断は不向きです。がんの死亡率を下げるには、早期発見・早期治療がかかせないため、年齢やリスクに合うがん検査を受けるようにしましょう。
「SalivaChecker(サリバチェッカー)」は、唾液で簡単にがんのリスクを調べられる検査キットです。慶應義塾大学先端生命科学研究所の研究結果に基づいて開発されており、現在がんに罹患している可能性を調べられます。1度の検査で、以下6種類のがんリスクを調査でき、痛みや負担のほぼない検査が可能です。
- 肺がん
- 膵がん
- 胃がん
- 大腸がん
- 乳がん(女性のみ)
- 口腔がん
通常のがん検診に加えてサリバチェッカーを利用することで、がんの更なる早期発見が期待できます。「検査を受けるのが不安」「家族にがんの人がいて不安」などの悩みを持つ方は、ぜひ気軽にご利用ください。