「膵がんは発見するのが難しく、症状が出た頃にはかなり進行している」
このような話を耳にしたことがある方も多いかもしれません。たしかに膵がんは早期発見が簡単ではなく、がんの中でも完治が難しいといわれています。
そこで本記事では膵がんの原因や症状、早期発見におすすめの方法などについてわかりやすく解説します。膵がんに不安な方や、気になる症状がある方はぜひ参考にしてください。
膵がん(膵臓がん)とは
膵がんとは膵臓に発生するがんです。膵がんのほとんどが膵液の通り道となる膵管の細胞から発生するため、一般的に膵臓がんといえば膵管に発生するがんを指します。膵がんのほとんどは、腺がんという組織型のがんです。
※腺がん…体を構成する組織のうち、腺組織とよばれる上皮組織から発生するがん。胃、腸、子宮体部、肺、乳房、卵巣、前立腺、肝臓、膵臓、胆のうなどに発生しやすい。
膵がんは、がん細胞が小さいうちから周辺のリンパ節や肝臓に転移しやすいのが特徴です。腹部内にがん細胞が散らばって広がる腹膜播種が生じる場合もあります。
膵がんは転移しやすく、症状が現れにくいため、早期に発見するのが容易ではありません。膵がんを発見したときにはすでに周辺組織に浸潤していたり、リンパ節や肝臓などに転移していたりするケースも多く、完治が困難ながんとされています。
膵がんの診断される数、死亡数、5年相対生存率は以下のとおりです。
診断される数(2020年) 44,448例(男性22,557例、女性21,891例)死亡数(2022年) 39,468人(男性19,608人、女性19,860人)5年相対生存率(2009~2011年) 8.5 %(男性8.9 %、女性8.1 %)
参考:国立研究開発法人 国立がん研究センター「がん情報サービス」
膵がんは、がんの中でも死亡数が高く男性では4番目、女性では3番目に位置しています。主な部位別のがんの死亡数は、以下のとおりです。
【男性】
がんの部位 | 人数 | |
1 | 肺がん | 52,908 |
2 | 大腸がん | 27,936 |
3 | 胃がん | 25,325 |
4 | 膵臓がん | 19,859 |
5 | 結腸がん | 18,146 |
6 | 肝臓がん | 15,226 |
7 | 前立腺がん | 13,429 |
8 | 直腸がん | 9,790 |
9 | 胆のう・胆管 | 9,220 |
10 | 食道がん | 8,647 |
【女性】
がんの部位 | 人数 | |
1 | 大腸がん | 25,195 |
2 | 肺がん | 22,854 |
3 | 膵臓がん | 20,316 |
4 | 結腸がん | 19,248 |
5 | 乳がん | 15,629 |
6 | 胃がん | 13,446 |
7 | 胆のう・胆管 | 8,019 |
8 | 肝臓がん | 7,682 |
9 | 子宮がん | 7,137 |
10 | 悪性リンパ腫 | 6,279 |
膵臓は胃の裏側あたりに位置している、長さ20cmほどの細長い臓器です。十二指腸に接している膨らんだ部分を膵頭部、反対側の脾臓に接している部分を膵尾部といいます。真ん中部分は体部といい、膵臓全体には膵管という管が通っているのが特徴です。
膵臓には主に以下の2つの役割があります。
- 内分泌機能
- 外分泌機能
それぞれ説明します。
内分泌機能
血糖値をコントロールするホルモンを血液へ分泌します。分泌されるホルモンは、以下のとおりです。
- グルカゴン:血糖値を上げる
- インスリン:血糖値を下げる
- ソマトスタチン:血糖値を調整する
インスリンは血液中の糖を使用してエネルギーを作ります。インスリンの不足などにより血糖値が高くなるとグルカゴンが分泌され、肝臓に糖を作らせて血糖値を上昇させます。インスリンとグルカゴンの分泌量を調整しているのがソマトスタチンです。
外分泌機能
食物の消化に必要な消化酵素を含んだ膵液を十二指腸へ分泌します。分泌される主な消化酵素は以下のとおりです。
- アミラーゼ:糖質を分解する
- リパーゼ:脂質を分解する
- トリプシン:たんぱく質を分解する
分泌される膵液は一日800~1000mlにもおよび、食物の消化吸収に役立てられています。
膵がんの主な原因
膵がんの主な原因は、生活習慣病である糖尿病、肥満、嗜好である飲酒や喫煙などです。慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍の既往歴がある方、血縁関係に膵がんを患った方も発生リスクが高まるといわれています。
また膵がんのリスクファクターとしては、以下のものが挙げられます。
因子 | リスクレベル | |
家族性 | 散発性膵がん | 第一度近親者の膵がん患者1人:1.5~1.7倍 |
家族性膵がん家系 | 第一度近親者の膵がん患者1人:4.5倍、2人:6.4倍、3人以上:32倍 | |
嗜好 | 喫煙 | 1.7~1.8倍 |
飲酒 | 1.1~1.3倍(アルコール摂取24~50g/日) | |
生活習慣病 | 糖尿病 | 1.7~1.9倍(発症1年未満:5.4倍、2年以後: 1.5~1.6倍) |
肥満 | 1.3~1.4倍 | |
膵疾患・膵画像所見 | 慢性膵炎 | 13.3~16.2倍(特に診断2年以内のリスクが高い) |
IPMN | 分枝型で由来浸潤がんが年率0.2~3.0% 併存膵がんが年率0~1.1% | |
膵嚢胞 | 3.0~22.5倍 | |
膵管拡張 | 6.4倍(主膵管径:≧2.5mm) | |
その他 | 胆石・胆嚢摘出術 | 胆石:1.7倍、胆嚢摘出術:1.3倍 |
血液型 | O型以外はO型の1.9倍 | |
感染症 | ピロリ菌:1.4倍、B型肝炎:1.6~5.7倍、C型肝炎1.5倍 |
膵がんの主な症状
膵がんは初期の段階では無症状であることがほとんどです。進行によって以下のような症状が現れてきます。
- 腹痛・背部痛
- 黄疸
- 食欲不振・体重減少
- 腹部膨満感
- 吐き気・嘔吐
- 糖尿病の発症・悪化
それぞれ説明します。
腹痛・背部痛
膵がんは周辺の臓器や血管などを破壊しながら進行するため、腹痛や背部痛が生じます。もっとも多く見られるのは上腹部痛で、食事とは関係なく背中の痛みや夜中の痛みが激しく続くのが特徴です。また、脾臓はたくさんの神経が分布しているため、がんの浸潤によって痛みが強く現れます。
黄疸
膵がんが進行すると、皮膚や粘膜、眼球の白い部分が黄色になる「黄疸」が現れます。膵がんが大きくなり胆管が詰まることによって、胆汁中にあるビリルビン(赤血球の老廃物)が体内に溜まるために生じるのが原因です。黄疸は膵がんの末期にもみられやすい症状とされています。
食欲不振・体重減少
膵がんでは食欲不振、体重減少の症状もみられます。がん細胞の増殖によって、悪液質(栄養不良のために体重減少し、衰弱した状態)や十二指腸への浸潤、消化酵素の分泌低下、食欲減退などが主な原因です。体重減少は膵がんの末期でみられやすいといわれています。
腹部膨満感
膵がんによってお腹の張り、腹囲の増大、苦しさを主症状とする腹部膨満感も見られます。お腹にガスが溜まっているような違和感があるのが特徴で、がん細胞が大きくなって臓器を圧迫したり、腹水が溜まったりするのが原因です。
吐き気・嘔吐
膵がんの進行によって、吐き気や嘔吐などの症状もみられます。がんの進行によって外分泌機能に障害をきたし、消化酵素の分泌異常が生じるのが原因です。
糖尿病の発症・悪化
膵がんの進行によって血糖値が上昇し、糖尿病の発症や悪化がみられます。がんの進行により、血糖値を下げるインスリンの分泌に異常をきたすのが原因です。糖尿病の発症や悪化は、膵がんの末期に見られやすい症状の一つです。
膵がんになると背中のどの場所にどんな痛みが出るの?
膵がんによる背中の痛みは、主に腰の上部から背骨の中央部にかけての範囲に出現する場合がほとんどです。鈍痛や焼けつくような痛みとして感じる場合が多く、夜寝ている時に増強するケースも少なくありません。また、食後や体を前屈させる際にも痛みが増強するという報告もあります。
膵がんによる背中の痛みは、がんの進行による周囲組織や神経への圧迫などが原因です。特に膵臓は背骨の近くに位置しているため、がんが背骨を通る神経を圧迫すると強い痛みが生じやすいでしょう。さらに進行してがんが他の臓器に転移すると、その部位にも痛みが生じる場合もあります。
膵がんの進行速度
膵がんは進行速度が速いといわれています。その理由には以下の2つが挙げられます。
- 発見時には進行している場合が多い
- 転移しやすい
それぞれ説明します。
発見時には進行している場合が多い
膵がんの初期では症状がほとんど見られないため、早期発見が容易ではありません。がんが進行してから背中の痛みや黄疸などの症状が現れるため、発見時には治療が困難な状態まで進行しているケースが多いでしょう。また、膵臓は胃の裏側に位置している小さい臓器であるため、検査が容易ではなく発見が遅れるという場合もあります。
転移しやすい
膵がんの進行速度が速いといわれるのは、がんの中でも転移しやすいのが理由に挙げられます。膵がんは小さながんでも周囲の血管やリンパ管に浸潤し、肝臓や肺などへ運ばれるのが転移しやすい要因です。
また、膵がんは腹部内で散らばりやすい特徴があり、腹膜に転移する腹膜播種になる場合もあります。
膵がんの早期発見にはリスク検査がおすすめ
膵がんの原因や症状、進行速度などについて解説してきました。膵がんは他のがんとは違い早期発見が困難で、発見時には治療が困難な状態となっている場合も少なくありません。進行速度も速いため、自覚症状がなくても定期的な検査を受けるのが膵がんリスクを防ぐためには重要です。
とはいえ、時間に追われて検査を受ける余裕がないという方も多いのではないでしょうか。そのような方向けに、最近では自宅でも簡単に膵がんの検査ができる検査キットも使用されています。
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